こんにちは、皆さん。ゴリラ教育研究所です。
現在英単語集の教材調査をしているのですが、そのときにふと「基本レベルの単語集でどこまで戦えるのだろうか?」と思ったので、少し調査をしてみました。
英語学習といえば、最初は「単語・文法」で、そして「構文(英文解釈)」を学んだ後に「長文読解」や「英作文」という流れで進めていくのが一般的です。ですが、最初の「単語・文法」にハードルを感じる人もいるでしょう。最近は中学レベルの単語から収録されている単語集が依然と比べて増えてきた印象ですが、上位レベルの大学を目指す場合は「2冊目の単語集が必要だ!」と言われると思います。
これ、ホントですかね?
英語嫌いの皆さん、単語集を2冊やるのってどう思います?
「やってられません!」と思う人は、続きを読んでみてください。
(私は「単語集2冊もできるか!!!!!!」と思う人です)
1.調査について
①使用する単語集:『システム英単語Basic』(5訂版)
注)『システム英単語』の第1・2章(1~1200)に対応しています。
②調査対象:大学入学共通テスト・近畿大学一般入試問題・関西大学一般入試問題
→それぞれ長文問題から一題抜粋し、その長文中の単語が『システム英単語Basic』に収録されているかどうかを調べています。
③調査のルール
・『システム英単語Basic』に収録されている単語で「カバー率」を算出する。収録されているかどうかは索引に掲載されているかで判断することとする。
・未収録の単語のうち、長文中の固有名詞・明確に中学内容の単語(houseなど)や前置詞(duringなど)は、大学受験用の単語集を使って覚える単語ではないので、これらの単語は実質的に『システム英単語Basic』を覚えられた受験生では判断できると考え、これらの単語も覚えている単語とみなして「実質カバー率」を算出する。
・収録されていない単語のうち、『システム英単語』の第3章以降に収録されている単語と、全く収録されていない単語のそれぞれの割合を出し、『システム英単語Basic』をやり切った後に『システム英単語』を覚える必要性があるかを確認する。
注)ここでの「収録」は、見出し語以外の派生語など「単語集の中に書かれていること」を意味する。
・手計算で数えていて多少の誤差はあるかもしれませんので、その旨ご了承ください。
★それぞれの問題を調査した時の写真を添付しています。色分けは下記のとおりです。
・黄色の蛍光ペン→『システム英単語Basic』に収録されている
注)下線のみ引いてある単語は、見出し語以外での収録
・ピンクの蛍光ペン→『システム英単語』の第3~4章に収録されている
・紫の蛍光ペン→収録されていない
2.大学入学共通テスト
①調査した問題:2021年度大学入学共通テスト第一日程、第六問B
②調査データ
・語彙数:528words
・カバー率:26.2%(139words)
・実質カバー率:91.9%
・『システム英単語』にしか収録されていない単語数:3語
・『システム英単語』にも収録されていない単語:40語(7.6%)
③所感
『システム英単語Basic』で十分対応できる文章。収録されていない単語も、sweetenerやsweetnessなど「sweet」の意味から想像できる単語やcalories(カロリー)といったもので、この文章が「cake,candy,soft drinks」から始まることから容易に想像ができる単語。本文内容も身近なテーマであり、読みやすい部類の文章といえるだろう。
本文中に「banana🍌」が出てきて食べたくなったゾ🦍
3.近畿大学
①調査した問題:2021年度一般入試1/30分、大問Ⅶ
②調査データ
・語彙数:404words
・カバー率:24.5%(99words)
・実質カバー率:96.8%
・『システム英単語』にしか収録されていない単語数:6語
・『システム英単語』にも収録されていない単語:7語(1.7%)
③所感
こちらも『システム英単語Basic』で十分対応できる文章で、むしろ『システム英単語』までやってしまうのはオーバーワークともいえる。所々に難解な単語が出現するが、前後の分からの類推や深く気にせず読み進めることができるかがポイント。英語に苦手意識が強い人は特に一文一文の意味を取れないと「読めない!」と感じることが多いが、一文が分からなくても「次の文で分かればいいや!」と割り切る姿勢が大切になるだろう。
問1に「本文の第一段落の内容に…」と書かれてあるので、特に設問から見ておくことが重要になるタイプの問題ですね。長文問題の点数ウエイトが高いので、得点源にしたいところ。
4.関西大学
①調査した問題:2021年度一般入試2/1分、大問Ⅱ
②調査データ
・語彙数:920words
・カバー率:18.3%(168words)
・実質カバー率:97.7%
・『システム英単語』にしか収録されていない単語数:1語
・『システム英単語』にも収録されていない単語:20語(2.2%)
③所感
調査前に私が予想していた以上に『システム英単語Basic』で対応できる文章であった。語彙数が多く見えるが、固有名詞が多く、難度の高い語彙がたくさんあるわけではない。ただ、これまで見てきた文章よりかは長いので、時間勝負になるか。なお収録されていない単語といっても、middle-westernやindoors(これを中学内容と換算するかは悩んだが、今回は中学内容としていない)といった単語やmiddle-class(中流階級)など演習を積んでいれば対応できるだけの語彙であるため、この文章を読んで「単語が分からない…」という関大志望生は少し厳しいと言わざるを得ない。
固有名詞がたくさん出てくる文章が苦手な人は、固有名詞を□で囲むなどして視覚的に整理するだけでも読みやすさが変わりますよ。
5.まとめ
今回の調査はあくまで入試問題の中の一部分が対象であることは気を付けておく必要があります。他の大問や文法問題が出題されるケースは別個に考えておくほうがいいでしょう。ですが、共通テスト・近畿大学・関西大学の入試長文問題を読み進めるには『システム英単語Basic』で十分対応できるといえるでしょう。
言い換えれば、『システム英単語Basic』を完璧に仕上げているのにこれらの長文問題を読んでも内容が理解できないのであれば、それは単語力に問題があるのではありません。特に難しい熟語が出題されているわけでもないので、熟語に関しても考慮する必要はないでしょう。つまり、考えられる原因としては、
・前後の文脈から判断すべき単語を「知らない」から読めないと思っている (→推測する練習をしましょう)
・一文一文の構造がつかめていない (→構文・英文解釈力の強化が必要)
・段落ごとの意味がつかめていない (→長文読解力の強化が必要)
・内容の読み取りはできるが、問題が解けない (→演習量を増やそう)
など、単語力以外にあると考えるのが適当です。
私が大学入試の英語の過去問を指導してきて、生徒さんに自分の解いた過去問を分析してもらうと、必ず「単語を覚えていなかったからできなかった」という話が出てきます。でもその単語、本当に覚えておかないといけない単語ですかね?もし単語を全部読めていたら、すべての問題が解けるんですかね?今一度問い直してみましょう。
特にもうすぐ受験という人で、近畿大学や関西大学が第一志望の人や英語が試験科目なのが共通テストのみの人は、『システム英単語Basic』かそれに準じたレベルの単語集を徹底することをおすすめします。(『システム英単語』を持っている人なら第2章までを完璧にしておくことですね。)
もちろん、より出題される英文の難易度がより高くなる大学(例:早慶)では、基本レベルの単語集では太刀打ちできませんので、語彙数を増やさなければならないことは言うまでもありません。
受験までに時間があるならば、自分の志望校の入試問題を分析して「本当に必要な単語集のレベル」を見つけるのもよいかもしれませんね。ただ、思っている以上に時間がかかりますので、それだけは注意してください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました🦍